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大阪地方裁判所 昭和59年(モ)2907号 判決

【主文】

一  当裁判所が昭和五九年三月一六日当裁判所昭和五八年(ヨ)第三七五四号実用新案権侵害差止仮処分命令申請事件についてなした仮処分決定は、申立人において金五〇〇万円の保証を立てることを条件としてこれを取消す。

二  申立人のその余の申立を却下する。

三  申立費用は被申立人の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

【事実】

「一 当事者の求めた裁判

1  申立人

(一)  大阪地方裁判所が昭和五九年三月一六日同裁判所昭和五八年(ヨ)第三七五四号実用新案権侵害差止仮処分命令申請事件についてなした仮処分決定は、申立人において金三〇〇万円の保証を立てることを条件としてこれを取消す。

(二)  訴訟費用は被申立人の負担とする。

(三)  仮執行宣言

2  被申立人

(一)  申立人の本件申立を棄却する。

(二)  訴訟費用は申立人の負担とする。

二 申立人の申立の理由

1  被申立人(債権者)は申立人(債務者)を相手方として、申立人の製造・販売する別紙第一目録記載の物件(以下「イ号物件」という)が、被申立人の有する実用新案登録第一一六六三二二号(別紙第二の実用新案公報記載のとおり)の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という)を侵害するとして、大阪地方裁判所に昭和五八年(ヨ)第三七五四号実用新案権侵害差止仮処分命令の申請をしたところ、同裁判所は右申請に基づき昭和五九年三月一六日、「申立人はイ号物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。」旨の仮処分決定(以下「本件仮処分決定」という)を発した。

2  しかし、以下述べるとおり本件仮処分決定の被保全権利は不存在である。」

【理由】

一本件仮処分決定の存在等について

被申立人(債権者)が申立人(債務者)を相手方として、申立人の製造・販売するイ号物件が被申立人の有する本件実用新案権を侵害するとして、当裁判所に昭和五八年(ヨ)第三七五四号実用新案権侵害差止仮処分命令の申請をしたところ、当裁判所は右申請に基づき昭和五九年三月一六日、「申立人はイ号物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。」旨の本件仮処分決定を発したこと、申立人はイ号物件の製造・販売を業とするものであるが、本件仮処分決定によりイ号物件の製造・販売を禁止されたことは、当事者間に争いがない。

二本件実用新案権の無効審判請求の帰趨について

1  申立人は、本件仮処分決定発令後に本件実用新案権を無効とすべき公知資料である米国特許の存在が明らかとなつたので、本件実用新案権は早晩無効審判により無効とされることが明らかであると主張するところ、<証拠>によれば、申立人は特許庁に対して、昭和五九年一月二五日本件実用新案権の無効審判の請求をし、更に同年三月三〇日新たに発見した米国特許に基づき理由補充をして、本件実用新案権は、米国特許その他の公知資料に基づき当業者がきわめて容易に考案できたものであるから、実用新案法三条二項の規定に違反して登録されたものに該当し、同法三七条一項一号の規定により無効とされるべきであると主張し、現在右無効審判請求事件が特許庁に係属中であることが一応認められる。そこで、まず、本件実用新案権が無効審判により無効とされる可能性の有無およびその程度について考察する。

2  別紙第二の実用新案公報によれば、本件考案(昭和四六年四月二八日出願)の構成要件およびその作用効果は次のとおりであることが一応認められる。

(一)  構成要件

(1) 車輛の荷台上に積載されたコンテナーケース内に配装したコンベアーに仕切板を直立せしめること。

(2) 上記コンベアーの動力伝達機構に連結した電動機および該電動機に給電する車輛の搭載バッテリーからなる駆動装置を設けること。

(3) 上記コンテナーケースの前部および後部に上記仕切板が移動するに応じてそれぞれ開閉するリミット・スイッチと、上記電動機の正逆転制御回路に組込んだ上記各リミット・スイッチにそれぞれ各別に接続された操作スイッチとを有する駆動制御装置を設けること。

(4) 上記(1)(2)(3)の構成からなるコンベアー付き自走車であること。

(二)  作用効果

(1) 車輛の搭載バッテリーをコンベアーの駆動源として利用するので、車輛のパワー・エンジンを利用する公知システムに比し、荷役作業時にエンジン排気ガスおよび騒音などを発生して作業性を阻害する虞れがない。

(2) コンベアーに設けられた仕切板は、荷物の荷崩れを防止するほか、積載する荷物の多少にかかわらず、この仕切板とコンテナーケースの後部とで荷物を挟んで安定に保持することができる。

(3) コンベアーの前後進により仕切板がコンテナーケースの前部もしくは後部位置に移動すると、リミット・スイッチが作動してコンベアーの駆動を停止せしめるので、作業者の操作ミスなどによつて仕切板およびコンベアー部分を破損せしめるという虞れを解消し、安全かつ確実なコンベアーの駆動を行なわせることができる。

(4) コンベアーの前後進動作は、遠隔から操作スイッチを操作して任意規制することも可能であるから、この種の荷役作業に対する利用分野を広げて能率ならびに作業性を一層高めうる。

(5) 本考案のコンベアー付き自走車は、コンベアーならびにその駆動機構を容易に車輛に装備可能なごとく構造、制御ならびに調節がきわめて簡単であるので、きわめて経済的に実施することが可能であり、軽量小型荷物の荷役作業の合理化に資することが少くない。

3  <証拠>によれば、米国特許(昭和三四年一一月一〇日特許、特許庁資料館昭和三五年三月七日受入)は別紙第三に図示されるようなトレーラーおよびトラック上に荷物を積み下すための装置に関する発明であり、その発明の目的とするところは、「荷積み下し作業に際し荷物を車輛の全長にわたつて運ぶ必要はなく、車輛の開放端から直接右作業を行うことができる車輛内蔵形の荷積み下し装置を提供すること、構造および操作がきわめて簡単かつ効果的な装置を提供すること、荷物を車輛の一端から他端まで運び、かつ、この目的のために特に認けられた別の動力装置によつて騒動される車輛の床レベルに沿つたコンベアーシステム形式の車輛用の荷積み下し装置を提供する」ことにあるところ、その構成は左記のとおりである。

(一)  右コンベアーシステムは、別紙第三米国特許明細書の図面4図、5図に示されるように、車輛の長手方向に配設された一対のエンドレスチェイン21、21と同じく車輛の長手方向に回転自在に支持され、クロスヘッド32を介してチェイン21、21を駆動させるねじ軸37と、該軸を正逆回転させるためのモーター47とを備えている。チェイン21、21については、その上方送路には隔壁27(別紙第三の4図、5図、8図)がそのべース26を介して取付けられているとともに、このベース26に連接して、チェイン21、21の下方送路にかけてリブプレート25……がチェイン21、21間に取付けられ、上方送路から下方送路に至る一連の荷物載置床が形成されている。チェイン21、21の下方送路には、上記載置床の後端側にクロスヘッド32が取付けられているとともに、このベッド32に設けられたねじ孔35を介してねじ軸37と噛み合つている。従つて、クロスヘッド32は、正逆回転するねじ軸37に沿つて前後に移動し、エンドレスチェイン21、21を正逆回転させる。

(二)  減速機45を作動するための動力を供給するために、車輛の主動力装置から独立した電動装置又はガソリン駆動ユニットのような任意所望の型式モーター47を使用してもよい。

(三)  実用においては、モーター47を動かすと、ねじ軸37が回転して隔壁27が車輛の開放端に向つて動く。荷物をリブプレート25および隔壁27によつて形成された床上に置いて、モーター47を反対方向に動かすと、隔壁27は車輛の反対側に向つてゆつくりと動く。この動作は、荷積作業の形態に応じて連続的あるいは間欠的に行うが、いずれにせよ、作業者は荷物を積み込む間は車輛の開放端に立つていることが必要なだけである。隔壁27は、車輛への荷物の積み込みとともに最も内部の位置まで動かされ、車輛から荷物を下ろすときには車輛の開放端に向つて動かされる。

4  米国特許は、本件考案と同じコンベアー付き自走車であり、そのコンベアーシステムは、車輛の荷台上に積載されたコンテナーケース内に配装したコンベアーに隔壁、すなわち仕切板を直立せしめた構成であり、本件考案の前記構成要件(1)を具備しており、又この隔壁によつて本件考案の前記作用効果(2)を達成することも明らかである。

次に右コンベアーシステムを駆動するための動力については、米国特許では、「減速機45を作動するための動力を供給するために、車輛の主動力装置から独立した電動装置又はガソリン駆動装置のような任意所望の型式のモーター47を使用してもよい」と示されていて、このことは、コンベアーの動力伝達機構、すなわち減速機45、およびスプロケット44、41とチェイン42に連結されるモーター47には、車輛の主動力装置とは別個の電気駆動ユニットを駆動源として使用する技術思想が開示されている。そして、右技術思想の下に、その駆動源に車輛の搭載バッテリーを選択するときは、本件考案の前記作用効果(1)を当然達成しうるものである。

米国特許は、リミット・スイッチおよび操作スイッチ等により構成される騒動制御装置(本件考案の前記構成要件(3))については、明確には開示していないが、前記3の(三)の技術内容が示されていて、当然右駆動制御装置を設けるべきであることを示唆している。しかも、<証拠>によると、物上げおよび運搬の編には安全装置および運動装置としてリミット・スイッチが用いられることが明示されていて、搬送機械において二個のリミット・スイッチを用いて物体を自由に移動させたり停止させたり任意の位置に停止させることは、本件考案の出願時において既に公知の技術的手段となつていた。

5  ところで、被申立人は、米国特許における自動荷役装置はモーターによりコンベアーを駆動せしめる構成をとつてはいるが、右モーターの駆動源は車輛の搭載バッテリーではなくこの目的のために特に設けられた駆動源であり、米国特許をもつてしても、車輛の搭載バッテリーをしてコンベアーを駆動せしめるという本件考案の進歩性は毫もゆるがないと主張する。しかし、米国特許明細書中には、前記のとおりコンベアーの駆動源を車輛の主動力装置から独立した駆動源に求める技術手段が開示されているのであり、そのことは既に本件考案の前記構成要件(2)と同一の技術手段の開示にあたると認められなくもないが、少くとも、米国特許明細書中にも、車輛に標準装備されているセル用のバッテリー以外に、自動荷役装置用の専用バッテリーを特別に搭載することによる特別の作用効果については何ら記載されていないうえ、本件考案出願時点においては、自動車にセル用のバッテリーが搭載されていることは公知の事実であつたと考えられるから、上記米国特許明細書においてその駆動源を車輛の主動力装置から独立した駆動源に求める手段が開示された後においては、これに自車搭載バッテリーを選択することは、当事者ならば直ちに想起し得えて、何ら特別の考案を要しないものとみなければならない。現に本件考案の考案者らも、「一般に、自走車に積載せるコンベアーは、軽量小型の荷物の荷役に使用されるだけであるので、運転時間が短かく、搭載バッテリーのごとく限定された容量の電源に依存しても十分に電動機を作動せしめ」得る(公報5欄5行目以下)として、上記想到が一般的に容易であつたことを開陳しながら、本件考案のコンベアー装置の駆動源を左様に自車搭載バッテリーに求めながら、バッテリー容量との関係においてその負担を軽減せしめる構成を採る技術手段の開示は全くしていないのである。

6 以上によれば、本件考案は、既に米国特許明細書中にその全部が開示されたとはいえないまでも、少くともその考案からきわめて容易に推考し得たものと考えられるから、本件実用新案権については、実用新案法三条二項の規定に違反して登録されたものに該当し、同法三七条一項一号の規定により無効とされるべきであるとして、特許庁の無効審判により無効とされる可能性が大である。

三本件仮処分決定を取消すべき特別事情の有無について

1  <証拠>によれば、次の各事実が一応認められる。

(一)  申立人側の事情

申立人は、昭和五七年二月に自動荷役装置の製造・販売を行うために設立された資本金一六〇〇万円の会社であり、設立当初はエンジンを駆動源とするPTO方式の自動荷役装置を開発し、試作品を製造してその試験販売を試みたが、一台も売れなくて中止した後、昭和五八年四月から車輛の搭載バッテリーを駆動源とする自動荷役装置であるイ号物件の製造・販売を開始し、申立人の代表取締役以下総勢五名でイ号物件のみの製造・販売を業としていた。

申立人は、イ号物件の開発および企業化に金二七二八万円の製品開発費をかけており、その性能を認められて大阪通商産業局長から新技術の企業化に必要な資金融資の推薦を受け、中小企業金融公庫から昭和五八年一二月に金三五〇〇万円、昭和五九年二月に金五〇〇〇万円の融資を受けて、本件仮処分決定が発せられた同年三月一六日当時は、ようやく企業化に成功する見通しがつきこれから利益を得ようとする矢先にあつた。

申立人はイ号物件の製造・販売のみをしていた会社であるので、本件仮処分決定により、全面的な操業停止を余儀なくされたうえ、得意先との受注契約も解約されて販売実績は一挙に皆無となつて、申立人の企業活動全体が休止状態に立至つており、下請先から購入した部品も他に活用の途はなく、借入金に対する利息金の支払も相当の額に達し、この先旬日をいでずして従業員の給料支払もおぼつかない状態となつている。

申立人の代表者である林光夫は、昭和四三年頃からPTO方式の自動荷役装置に関する発明ないし考案を多数出願しており、申立人は、PTO方式による自動荷役装置の生産を行うことは技術的には可能であり、しかも、光洋機械産業株式会社がライセンシー、株式会社とね製作所がライセンサーとなつて、現在でもPTO方式による自動荷役装置の製造・販売がなされていて、その自動荷役装置は実際にも使用に供されている。しかし、PTO方式による自動荷役装置は、バッテリーを駆動源とする自動荷役装置に比較して構造が複雑となつて製品資材コストが二割ないし三割も高くなるうえ、荷役作業中終始エンジンを駆動させておかなければならないため、騒音が発生して早朝および夜間の荷役作業が困難であり、又排気ガスの発生によつて倉庫内や工場内等での荷役作業には支障を来たすという欠点がある(別紙第二の実用新案公報の2欄7行目ないし14行目参照)。従つて、申立人がバッテリーを駆動源とする自動荷役装置(イ号物件)から、PTO方式の自動荷役装置へと生産を切り換えることについては、技術的には可能であるとしても、一旦、前者を発売しその販売ルートを開拓しつつあつた申立人が、再び後者に切り換えることによつて顧客を失う危険があるなど、商業的生産ベースに乗るかは大いに疑問があり、右切り換えによつて本件仮処分決定による損害を回避するに有効な方策ということはできない。

(二)  被申立人側の事情

被申立人は、昭和二五年六月に設立された資本金四三億八六〇〇万円、東京証券取引所第二部上場会社であり、昭和四五年四月頃本件考案の開発に着手し、昭和四六年四月頃からその実施品「オートコン」の製造・販売を始めたものの、当初の販売台数は年間二、三台で昭和五二年頃まで赤字が続いた。それにもかかわらず、被申立人はオートコンの改良、販売促進に努力した結果、昭和五三年に日本郵便逓送株式会社への大量かつ継続的な売込みに成功したことが直接のきつかけとなつて、同年から黒字に転換したのであるが、その間の累積赤字額は約一億円にも上つた。

申立人がイ号物件の製造・販売を開始した昭和五八年四月までは、日本国内で車輛の搭載バッテリーを駆動源とする自動荷役装置の製造・販売を行つていたのは、被申立人のみであつたのに、申立人がイ号物件の製造・販売を始めてからは、神鋼商事株式会社を発売元として、被申立人の最大の顧客である日本郵便逓送株式会社をはじめとして、各自動車販売会社、外食産業、航空会社等に対して販売攻勢をかけ、しかも申立人のイ号物件の方が被申立人のオートコンよりも価格が相当安かつたために、被申立人は顧客を奪われ営業上相当の影響を受けたのであり、もし本件仮処分決定が取消され、申立人が再度イ号物件の製造・販売を開始すれば、被申立人は再度営業上少なからぬ損害を蒙ることが予想される。

もつとも、本件実用新案権の存続期間は昭和六一年四月二八日まであと一年数か月しかないうえ、申立人は代表取締役以下五名の小企業にすぎず、イ号物件の発売元であつた神鋼商事株式会社についても本件仮処分決定と同じ決定中でイ号物件の販売を禁止されたため、申立人に対する関係でのみ本件仮処分決定を取消しても、申立人が右一年数か月間にどれ程のイ号物件を製造・販売できるのか、相当疑問が残る。又、被申立人の事業活動のなかでのオートコンの占める割合は極端に低く、昭和五八年度におけるオートコンの売上高は金二億一五〇〇万円であり、被申立人の同年度の総売上高に対する割合はわずかに約一パーセント程度にすぎない。

2  右疎明された事実によれば、(一)申立人はイ号物件のみの製造・販売を業とする小企業であり、多額の製品開発費をかけてやつと企業化に成功する見通しがつきこれから利益を得ようとする矢先に、本件仮処分決定により申立人の企業活動全体が停止され、このまま推移すれば、旬日を出ずして倒産に至る虞れは極めて大でありうるところ、申立人がイ号物件をPTO方式に切り換えることも、右危険を回避する手段としての実効性が疑わしく、本件仮処分決定の存続は、申立人に対し著るしい損害を蒙らしめるものということができるが、他方、(二)被申立人側においても、長年の歳月と莫大な費用をかけてオートコンの企業化に成功したのに、本件仮処分決定が取消され申立人が再度イ号物件の製造・販売を開始すれば、顧客を奪われ営業上少なからぬ損失を受けることは予想されるが、被申立人の営業活動のなかでのオートコンの占める割合は極端に低いうえ、申立人は代表取締役以下五名の小企業にすぎず、しかもイ号物件の発売元であつた神鋼商事株式会社がイ号物件の販売を禁止されているため、申立人が本件実用新案権の存続期間の一年数か月間に製造・販売できるイ号物件の数にも限度があり、本件仮処分決定を取消しても、前記損失は、申立人の蒙る前記損失に比較してそれほど大きなものではないと思われる。

3 そのように、本件仮処分決定により申立人の蒙る損害と、本件仮処分決定を取消すことによつて被申立人の蒙る損害を比較すれば、明らかに前者がはるかに大であると認め得るが、この様な場合民訴法七五九条の特別の事情の存否に当り、前記本件実用新案権が早晩特許庁において無効とされる可能性が大であると一応認められる事情は、なお無視することはできない。蓋し、それは現時においては被申立人の本案請求権(差止請求権)は現存するものではあるけれども、それが覆滅する虞れが大である以上、左様な本案請求権の現存することの一事を以て、申立人に前記倒産の虞れを伴う著るしい損害の発生を甘受せしめることは相当でなく、結局申立人側に異常な損害を生ぜしめるものというを妨げず、他方被申立人側においては、仮処分取消によつて蒙る損害は、将来本件実用新案権が無効となることにより発生しなかつたことに帰する可能性が大であり、すでに左様な将来遡つて消滅する可能性が大である本案請求権につきその仮の満足を遂げしめることの問題性をも考慮すれば(なお本案訴訟ならば訴訟手続を中止して審判結果を待つのを相当とする場合にあたるが)、被申立人の主張の3項所論の点を考慮に入れても、被申立人側の損害は金銭補償に代え得る損害と認めるのが相当である。

四結論

以上のとおり、本件仮処分決定にはこれを取消すべき特別事情があるので、申立人が金五〇〇万円の保証を立てることを条件としてこれを取消すこととし、申立人のその余の申立を却下し、民事訴訟法七五九条、八九条、九二条但書、七五六条ノ二、一九六条を各適用のうえ、主文のとおり判決する。

(潮久郎 紙浦健二 徳永幸藏)

第一 イ号物件目録

一 本件自動荷役装置付自走車

(一) 図面は、申立人株式会社国際輸機の生産にかかる自動荷役装置付自走車を示すものであり、第1図は、その全体を概略的に示す側面図、第2図は、そのコンベアー部分を概略的に示す側面図、第3図は、仕切板部分を概略的に示す側面図である。

(二) 本件自動荷役装置付自走車は、第1図に示すように、車輛(1)よ荷台(2)上に積載されたコンテナーケース(3)内に配装したコンベアー(4)に仕切板(10)を直立せしめ、右コンベアー(4)の動力伝達機構(図示せず)に連結した電動機(13)および該電動機(13)に給電する車輛の搭載バッテリー(8)からなる駆動装置、並びに右コンテナーケース(3)の前端部および後端部に上記仕切板(10)が移動するに応じてそれぞれ作動するリミット・スイッチ(11、12)と右電動機(13)の正逆転制御回路に組み込んだ上記各リミット・スイッチ(11、12)にそれぞれ各別に接続された操作スイッチ(17)とを有する駆動制御装置を設けている。

(三) 第1図に示すように、仕切板(10)の下部両側面には滑動部材(19)を、荷台(2)の両側には滑動部材(19)に嵌合するガイドレール(20)をそれぞれ設けている。

(四) 第2図に示すように、コンベアー(4)の両端には、駆動ローラー(6)と従動ローラー(7)とを設け、コンベアー(4)のベルトとチェーンのつなぎ目には、連結部(18)を設けている。

(五) 第3図に示すように、仕切板(10)後背部にはテンション装置(21)及び当て板(14)を設けている。

(六) 操作スイッチ(17)の一方を押すと、電動機(13)は前進方向に回転を行い、動力伝達機構(図示せず)を介して、駆動ローラー(6)をコンベアー(4)前進方向に駆動せしめ、コンベアー(4)が後部ドアー(5)の方向へ前進を続け、仕切板(10)がコンテナーケース(3)の後端部に達して、連結部(18)がリミット・スイッチ(12)を押圧すると、リミット・スイッチ(12)が作動して、電気回路が切れて、電動機(13)は停止する。操作スイッチ(17)のもう一方を押すと、電動機(13)に対し前進の場合と逆方向に電流が流れ、したがつて、電動機(13)は前記とは逆方向に回転し、前記と同様に動力伝達機構(図示せず)を介して、駆動ローラー(6)に伝達され、コンベアー(4)を後退させ、仕切板(10)がコンテナーケース(3)の前端部に達して、当て板(14)がリミット・スイッチ(11)を押圧すると、リミット・スイッチ(11)が作動して、電気回路が切れて、電動機は停止する。

二 本件自動荷役装置

本件自動荷役装置は、第1図ないし第3図に示す前記本件自動荷役装置付自走車のうち、1、2、3、5及び8を除いた残りの部分である。

第二 本件実用新案権

実用新案登録請求の範囲

「車輛の荷台上に積載されたコンテナーケース内に配装したコンベアーに仕切板を直立せしめ、上記コンベアーの動力伝達機構に連結した電動機および該電動機に給電する車輛の搭載バッテリーからなる駆動装置を設け、上記コンテナーケースの前部および後部に上記仕切板が移動するに応じてそれぞれ開閉するリミット・スイッチと、上記電動機の正逆転制御回路に組込んだ上記各リミット・スイッチにそれぞれ各別に接続された操作スイッチとを有する駆動制御装置を設けてなるコンベアー付き自走車。」

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